良い会社の組織論はたくさんありますが、組織論というと、どちらかといえば制度にフォーカスされることが多いものです。例えばパタゴニアのように、いつサーフィンに行ってもいいという制度がある会社もあります。この他にも、ランチを上司と食べに行ったらいくらか支給される制度や、アイデアを言うだけで500円支給される制度などもあります。
ただ、そういう制度を作っても、おおよそ誰もしないんです。「驚くほど社員がこういった制度を活用しない」ということに共感している社長は多いと思います。
社員が共感できていないことがその背景にある
なぜかというと、社員側にしてみれば、その制度に何も共感ができないことが多いからです。例えば「アイデアを出したら500円」ということは理解したとしても、それだけでは、それに何の意味があるのかがわかりません。
社長からすれば、「どんなアイデアでも出すだけで500円もらえるのに。20日出したら10,000円だし、1年間なら12万円もプラスになるのに、やらない理由はないのでは」と思うかもしれませんが、おおよその場合はほとんど活用されません。この制度だけに関わらず、本を買ってもいい、セミナーを受けていいという制度を設けても、それを活用する人はほとんどいません。いたとしても、私利私欲のためのものになってしまうことが多いんです。
本当に500円が欲しい人が、あまり考えずに使えないアイデアを入れてきたり、セミナーの制度であれば、自分が独立した時のためにセミナーに行って勉強しておこうと思って利用されたり。そんなふうに、単に自分のためという発想になってしまうことが多くあります。
制度が形骸化するのは関係性ができていないから
なぜ制度が形骸化してしまうかというと、社長と社員との関係性ができてないからです。関係性がちゃんとできている会社であれば、制度に対して「これから一緒に考えて頑張ろう」「しかもお金までもらえるなんて」となる。
しかし関係性ができていなければ、なぜ社長がそれをやろうと思っているかという理由や背景が全く伝わらないため、何をしても空回りになってしまいます。ですから、関係性があると言うことは非常に大事です。関係性がある組織、会話が多い組織というのは、問題が生じにくいんです。意図したことをやってもらいやすい。もしある程度問題が起きたとしても、どうとでもなるというのが私の考え方です。
そうでなければ、よくありがちな「来月からこれをする」と社長が突然言い出して社員が動揺する、という状況になりがちです。普段からコミュニケーションが取れていれば、そういうことにはなりにくくなります。
関係性を深める方法はステージごとに異なる
どうやって関係性を深めて行くのかということについては、ステージごとに変わります。まずステージの定義をしておきましょう。第1ステージは関係性が全くない段階。第2ステージは、関係性がある程度ある段階。そして第3ステージが、社長と社員がツーカーの関係性を作れていて、何も言わなくても方向性がわかっているような段階です。
第1ステージの「関係性がない段階」であれば、無理やりにでもそういう機会を作っていく必要があります。例えば月一回の会議や飲み会など。全員が集まって、集まった全員が無理やりにでも発言していくような機会を作らないと、関係性はできていきません。
弊社は第2ステージにいると考えています。過去にこの『関係性』ということに気づいてから、毎月飲み会を開いていました。そうすることでみんなが話すようになって、関係性は良くなってきました。今は社内で雑談を奨励していることもあって、社員同士もよく喋るようになっているため、毎月きっちり飲み会などを開くことはしていません。
ただ、第2ステージでは関係性がある程度できてはいますが、それなりのイベントを開催し続けて維持していく状態です。気を抜くと関係性は下がって行ってしまうので、その辺りは気をつけていきたいところです。
横須賀輝尚