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人が育つのには、時間がかかる

基本的には「やりたいことをやる環境を作る」ことはすごく大事だと考えています。もちろん業務命令として必要なことをやってもらうということも大事で、これは入社時に当然同意を取っています。ですが基本的には、本人がやりたいということをやらないと伸びないんです。つまり、やらされていると思っているうちは、伸びない。

ポイントは、本人が何をやりたいかということを、しっかり聞くということです。会社の中で当然仕事をしてもらうことも大事ですが、志向性は個人によって一人一人違うわけです。例えば給料を上げることにものすごくフォーカスした人もいれば、やりがいにフォーカスしている人もいる。本人がやりたいと思って、さらに志向性が合う目標設定をこちらで一緒に考えるということが重要です。

社員と社長とでは成長の度合いのスピードが違う

コンサルタントだけじゃなく経営者にありがちなのは、成長の度合いのスピードが社員と社長とでは違うことがわかっていないこと。例えば社長に「社員さんが入社後、慣れて仕事ができるようになるまでにどれくらいの期間が必要だと思いますか?」「どれくらいの期間で慣れると思いますか?」と聞くと、大体「1ヶ月ぐらいじゃないの」と言うんです。

しかし、うちの社員全員にこれまで聞いてきましたが、慣れるまでには半年くらいはかかります。仕事ができるようになるまでじゃなくて、慣れるまで。やっぱり通勤経路も違いますし、人間関係も違います。扱う仕事も違う。だから、まず「慣れる」ということに半年かかってるわけです。このように、基本的に自分が動いているスピードと同じ感覚で見ない、ということが大事です。

一人一人と志向性を合わせて一緒に目標設定をしていく

本人がやりたいと思うことと、会社でやりたいと思うことを合わせるということは重要ですが、それを全体で作るのはすごく難しいわけです。「うちの会社はこうだからこういう方針でやってね」みたいなものは。例えば営業部があるような大きな会社であれば違うかもしれませんが、社員が数人というような規模だと、一人一人と志向性を合わせていくことが必要になります。

もちろん給料が高いに越したことはありませんが、給料が全てじゃないという人もいます。そういう人には、裁量権をもっと広く与えたほうがもっとやる気が出るのかとか。ちゃんと、その人の志向性と、会社がこういうことやってもらいたいと考えていることを「やりたい」と言ってもらえるような目標設定を本人と一緒にして、それができたときにちゃんと給料が上がることが大切です。

明確なチェックポイントがあって、評価が出されて給与が上がりますというのは、この規模では不可能なんです。ダメ出しになってしまうんですね。例えば勤務態度のチェックリストがあって、仕事の取り組み方や姿勢などに対して五段階評価なんていうものがあると、全部満点にはできない。そうすると、悪いところ探しになってしまう。

そこでこの規模の会社であれば、悪いところはとにかく置いといて結果をまず出す方が大事だね、ということになる。その時にやりたいことが見つかって、じゃあこれやろうね、といったときに、例えば3ヶ月でモノになるかと言ったら、ならないんです。もちろんなる人もいますが。そういう意味では、人が育つのには当然時間がかかるということ。
1番よろしくないのは、途中で「やっぱりやめます」ということ。これが1番良くない。例えば大きな方向転換をしたいという社員に関しては、重大な決断ですから勝手に判断はしないようにというのと、「自分で責任持ってやるんですよ」という話はします。

人は未来がないと生きられない

私もそういう部分はありますが、社長は社員側に立って考えるっていうことがあまりできていない。自分の会社の社員として入って頑張って、将来が見えてるのかな?というのは考えていかないと。安定はしていても、人は未来がないと生きられないんです。未来があると生きられる。例えばベトナムなんかもそうですが、物価が安く、まだ貧しい地域がある国が不幸せとは限らないんですよね。そこはやっぱり豊かな国の方がいいかもしれないですが、貧しい地域がある国でも「もっと良くなる」という未来があれば結構生きていける。

会社が進む方向性と個人が進む方向性を一致させて、それで頑張れば結果が返ってくる、評価が返ってくるという形にするということがベストです。そんなところをうまく話し合っていって、この辺を丁寧に取り組んで行かないといけないと思っています。

横須賀輝尚

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